舞木峠の草原に響く狸の神楽
どんな伝承か
狸はほかの獣よりいろいろな声をまねるのが上手なようで、狸の神楽はこのあたりの人なら一度や二度は聞いたことがあるという。舞木峠の道にも、それがよく聞こえる草原がある。ほんの四、五間先で、笛も太鼓も本物と寸分たがわぬ音で鳴り、がやがやと笑いながら囃す様子まで聞こえる。目をつぶっていれば狸のしわざとは思えず、狸と知っていても感心せずにはいられない。人をだますのでもいたずらでもなく、自分が面白くてやっているのでなければ、人を感服させるためだろうと著者は書いている。
原典より
狸の神樂などは此邊の人で、一度や二度聞かぬ者が無い位だ。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。