峠で捕まった鶇仲買人の竹さん
どんな伝承か
大正九年十月三十日の朝、尾張・美濃・三河の国境にある三国山の東、金毘羅様の峠の大松の下での出来事。柳田の道案内を買って出た飯野の経師屋が、美濃下石の鶇仲買人である竹さんを見つけて声をかけた。竹さんは鳥屋の景気がよいころ、このあたりの村々で鶇を高値で買う約束をしておきながら、いまになって逃げ回っていたのである。経師屋の案内志願はこの男を捕まえるためでもあった。言い返せない竹さんは、その場で十円あまりを払い、値の張る鶇を背負わされる羽目になった。
原典より
不義理の竹さんは一言も無く閉息し、澁々十圓何がしを爰で勘定し、高價な鶇を文字通りに背負ひ込んだ。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。