岩堂の不動尊を齧った鹿
どんな伝承か
男鹿と深浦との間の海岸での話である。浜田という村の岩堂の不動尊は、ある年、何匹かの鹿が雪に降りこめられてこの岩屋の中にいたときに、その木像をすっかり齧ってしまった。行基菩薩か誰かの名作が鹿に食べられて、もう形も分からぬようになっていたと、菅江真澄の日記の中に書いてある。ある年、特別に雪の深かった冬に、男鹿の半島から多くの鹿の群れが渡って来て、津軽深浦の椿の林を食い荒らし、老木がわずかになったとも同じ旅人の紀行は記す。鹿は青いものが足りなければ樹の皮でもかじるのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。