尊氏を渡した八剣神社の三匹の鹿
どんな伝承か
岡崎市岩津町大門の八剣神社に伝わる、三鹿の渡の由来の二つ目の話。かつて東矢作郷明大寺村(同じく岡崎市)にしばらく住んでいた足利尊氏は、やがて将軍となり、手勢を率いて京へ上る途中でこの地に差しかかった。ところが折悪しく矢作川が洪水で渡れず、立ち往生してしまう。水が引くのを待つ余裕はなく、尊氏は八剣神社に祈願をこめた。すると社殿の森から三匹の鹿が現れ、浅瀬を案内して一行を無事に対岸へ渡してくれた。人々はこれを八剣神社の化身だろうと考え、これより三鹿の渡の名が起こったと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。