八剣神社の森に伝わる三鹿の渡
どんな伝承か
岡崎市に編入された岩津町の大門、矢作川を望む八剣神社境内の森にある三鹿の渡という地名には、三つの伝説が伝わる。第一は昌泰三年九月、瑞雲と瑞光の中で熊野の大門神社の神と宝剣がこの地に降り、村人が社を建てて遷座祭を行ったとき、白い鹿に乗った神童が矢作川を渡って現れて神楽を舞ったので、はじめは鹿の渡と呼んだというもの。第二は、京へ上る足利尊氏が矢作川の洪水に阻まれて八剣神社に祈ると、三匹の鹿が現れて川瀬を案内し対岸へ渡したというもの。第三は桶狭間の戦で敗走する徳川家康が矢作川を渡れずにいると、三頭の鹿が泳ぎ渡ってきて家康を背に乗せ大門の郷まで送り届けたというもので、名付けたのは家康だとも伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。