野川を堀にした小田原落人の屋敷
どんな伝承か
大東京の市域を出るとすぐ覚東と小足立という二つの部落になる。梅や桃や栗の木が多い、静かな黒土の村で、その間を野川が自在に曲がりくねって流れていた。小足立の箕和田で柳田は思わぬものを見ている。戦前にミシガン大学のホール教授が学生を連れて訪れ、古い大きな農家を案内してほしいというので、ふと訪ねたのが冨永という家だった。記録はなく、小田原城から落ちてここに土着したという口碑だけを伝える。大きな松の立つ崖を下ると帯のような稲田が続き、その外を野川がめぐる。岸の堤には土居を正三角形に五箇所ほど突き出させた明らかな人工の跡があり、これで籠城するつもりだったかと一同舌を巻いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第3巻』を全158話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。