藤小屋村の倉橋左大臣と杓子
どんな伝承か
南伊勢の山間の村には、小椋の苗字を名乗りながら轆轤の仕事に携わらない者が多い。「本朝国語」に採録された多気郡藤小屋村はその一例で、有名な杓子生産の中心地である。惟喬親王の臣倉橋左大臣という者が親王の令旨を奉じて、近国の山々から杓子の材料を自由に採取すると伝えられる。杓子も小椋庄の産物の一つで宮の考案した四品に数えられるが、諸国の木地屋は多くは純然たる轆轤師で杓子には関わらない。杓子工の分布は木地屋の区域よりずっと広く、柳田は器械の簡単な杓子の方が古く、やや軽んじられて早く分かれ出たものと想像する。藤小屋村は杓子の一つの本山でありながら、近世には江州との連絡が全くなかったらしいという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。