老母の丸石を祀る祠
どんな伝承か
布川の兄の家の庭には、土蔵の前の二十坪ほどの平地に二三本の木があり、その下に小さな石の祠が南向きに立っていた。家の持ち主の先々代の、非常に長生きした老母の霊を祀っているという。いたずら盛りの柳田がこっそり石の戸を開けてみると、中には幣も鏡もなく、中央を彫りくぼめて直径五寸ほどの石の球が嵌め込んであった。後に聞き集めたところでは、その老母はどういうわけか蝋石の丸い球をいつも持ち、床についてからも撫でさすり抱えて温めていたといい、何かの因縁が添って死後にこの丸石を祠に祀り込めたものらしい。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。