島原岩下越のダラシ
どんな伝承か
同じ地方の最も具体的な実例が四つ以上、本山桂川が編集していた「土の鈴」第四号に出ている。同じく温泉岳の周囲だが、南高来郡愛野村から島原の城下へ行く岩下越の峠のあたりで、前の学生の例とは別の場所らしく、室生の例のように一点に定まってはいなかったようである。ここでもダラシと言い、憑かれると体中がだらしなくなるといって、突然手足がしびれて力が抜け、冷や汗が出て腹がこわばる。腹を押さえて痛い痛いと言いながら来る者を見たともいう。食べ残しを藪へ投げたら治ったともあり、昔この辺で旅人が餓死してその魂が留まっているとも、首をくくった者があるともいう。米の字を手に書いてなめる法は紀州と似ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。