藤代山で獵師が撃った毛の怪物
どんな伝承か
安倍郡大川村大字日向の奥にある藤代山で、かつて西河内の某という猟師が、大きな人の形をして毛に覆われたものを鉄砲で撃ち止めたことがあった。『駿河国新風土記』巻二十は寛政の初め頃の出来事らしく記している。猟師は撃ったものの恐ろしさのあまりそのままにして家へ帰り、それが病のもとになって死んだ。一年も過ぎたらこれこれの場所へ行ってみよという遺言に従い、時を経て捜しに行くと、大きな脛の骨などが散らばり、傍らには四、五尺もあるかと思う白い毛がおびただしく落ちていたと伝えられる。柳田は、それほど長いなら髪の毛だろうと述べ、又聞きを重ねるうちに猿や狒々の話と混同されやすいと注意している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。