駿府城に現れた青蛙食う男
どんな伝承か
『東武談叢』などの聞書に見える話である。慶長十四年四月四日、駿府城内の御殿の庭に、ぼろを着て髪を乱し青蛙を食う男がどこからともなく現れた。住所を問うても答えず、ただ手で天を指したので、天から来たとでもいうのかと人々は言った。家康は左右の者が殺そうとするのを止め、城外へ放たせたところ、たちまち行方が知れなくなったという。この怪人は手足に指が無かったともあるが、天を指したという以上それは信じ難いと柳田は述べ、多くの人が共に見た出来事だから幻とは言えず、山人が里へ近づこうとして不幸な誤解を受けた例の一つに数えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。