開けてはならぬ紙包みの蛇の鱗
どんな伝承か
亀ヶ池のほとりで馬子の杉浦金助を呼び止めた美しい女は、三宝寺池のそばまで乗せてほしいと頼んだ。三里半もの道を、金助は背後に女の気配を感じながら夢遊病者のように歩き、気づけば池の畔に着いていた。女は紙包みを駄賃として握らせ、これを持っていれば一生食うに困らない、ただし決して開けるなと言い残して去る。好奇心に負けた金助が開くと、中には蛇の鱗が三枚あった。驚いて女の影を追うと、女はすでに蛇身に変じて池へ飛び込もうとしていた。夢中で赤羽へ逃げ帰った金助は高熱を発し、まもなく死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年))
『行楽と史蹟の武蔵野』は、寺島裕が昭和十二年に著し、新生堂から発行した武蔵野の史跡探訪記である。狭山丘や山口貯水池の周辺から、行田・粕壁・生田・淀橋・中野・柴又・多摩御陵などの社寺、城址、古戦場、塚を歩いて訪ね、交通の便とともに由緒や伝説を記す。小橋一太と新井堯爾の序文、著者の自序を巻頭に置き、前著「史蹟の武蔵野を探ねて」に続く行楽案内として土地ごとの短い節を連ねる。