瀬戸物屋へ飛び込んだ生首
どんな伝承か
文久元年五月二十日、清川八郎は書画の会にかこつけて両国の万八楼で水戸の同志と会し、その帰り道、日本橋甚右衛門町の路上でわざと絡んできた町人を無礼打ちにした。一刀は鋭く、斬られた男の首は棚から転がり落ちた西瓜のように宙を飛んで、真向かいの瀬戸物屋の店先へ飛び込んだ。ぼんやりしていた店員は驚いて腰を抜かしたという。この一件で清川は町奉行の尋ね者となり、逃亡の巻き添えで捕えられた妾のお連は、厳しい拷問にも彼の動静を語らぬまま、翌々年に伝馬町の牢で病死した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年))
『行楽と史蹟の武蔵野』は、寺島裕が昭和十二年に著し、新生堂から発行した武蔵野の史跡探訪記である。狭山丘や山口貯水池の周辺から、行田・粕壁・生田・淀橋・中野・柴又・多摩御陵などの社寺、城址、古戦場、塚を歩いて訪ね、交通の便とともに由緒や伝説を記す。小橋一太と新井堯爾の序文、著者の自序を巻頭に置き、前著「史蹟の武蔵野を探ねて」に続く行楽案内として土地ごとの短い節を連ねる。