時平の耳から現れた道真の怨霊
どんな伝承か
延喜九年(九〇九)三月、左大臣藤原時平が病に倒れた。薬も陰陽師の祭りも効かず、菅原道真の霊の仕業と悟った時平は、三善清行の子で法験の名高い浄蔵を招いて怨霊調伏の祈禱をさせた。正午ごろ見舞いに来た清行の前で、道真の怨霊が青龍となって時平の両耳から顔を出し、帝釈天の許しを得て仇を討つところなのにお前の息子が祈り伏せようとしている、すぐやめさせよと迫った。恐れた清行が浄蔵に書状で伝え、浄蔵が退出すると間もなく時平は三十八歳で死に、娘の女御や孫の東宮ら一族も次々に早世したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。