白い犬で羽衣を盗んだ伊香刀美と天女
どんな伝承か
日本に伝わる天人女房譚のうち最古の記録とされるのが、『近江国風土記』逸文に見える伝説である。近江国伊香郡与胡郷の南にある伊香の小江(余呉湖)に天女が水浴びに降りてきた。西の山にいた伊香刀美という男が白い犬を使ってその羽衣を盗み取り、天女を妻にした。天女は男とのあいだに男女二人ずつの子をもうけたが、やがて羽衣を見つけて天へ帰っていった。この子らが伊香連の先祖だという。著者は、白い犬を連れて西の山にいた伊香刀美を山で猟をする者とみて、この伝説は山の民と深く関わるものだとする。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。