不幸を呼んだ淡路島の龍の宝珠
どんな伝承か
著者が十年近く前に体験した話である。大阪の民放のディレクターが写真を持って研究室を訪れ、淡路島のある家が古道具屋で手に入れた宝珠という奇妙な珠について調べてほしいと頼んだ。その家では不幸が続き、珠の祟りではないかと言われていた。写真の珠の表面には、蛸とも龍ともつかない怪物が浮き彫りにされていた。著者は数日後、これは龍王が持つという如意宝珠の一種で、農村なら雨乞いや日乞いに、海辺ならしけを鎮めるのに用いたもので、浮き彫りは龍神だろうと伝えた。著者は珠を譲り受けたいと申し出ていたが、番組に招かれた女性の宗教者が処置すると言って持ち帰ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。