殺生石となった玉藻の前
どんな伝承か
近衛天皇の寵愛を一身に受けた美女玉藻の前のため、帝は政務を顧みず、顔色も衰えた。重臣たちが陰陽師安部泰成に占わせると、異国の王たちを惑わせてきた妖狐の化身と出る。ひそかに祈祷を始めると玉藻の前は苦しみ悶え、九本の尾をなびかせた七色の老狐となって東の空へ飛び去った。朝廷は上総介広常と三浦介義澄に退治を命じ、二人は神のお告げで百日間犬を射る稽古を積んで、ついに射止める。ところが狐の魂は石と化し、近づく人や獣を毒気で殺したので殺生石と呼ばれた。玄翁和尚が金槌で打ち砕いたが、今も那須湯本の山腹に残って異臭を放つという。
原典より
全身を七色にかがやかせ、ぱっと宙空にとび上った姿を見れば、九本の長い尾をなびかせた、世にもまれなる大きな老狐であった。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。