もっこを持ち帰れと諭した高藤山の親捨て
どんな伝承か
一宮の高藤山の近く、新堰のそばにほら穴があり、昔はこの穴に年老いた親を捨てる習わしがあった。ある日、一人の息子がつらい思いで親をもっこに乗せて捨てに行き、ようやく決心して親ともっこを置いて帰ろうとすると、親は、もっこを置いていってどうする、次はお前が捨てられる番なのだから大事に持ち帰れ、と言った。親の情に打たれた息子は涙ながらに親をもっこに戻して連れ帰り、孝行を尽くしたという。これをきっかけに親捨ての風習は絶えた。富津の篠部には鬼泪山でのこととして、鋸南町の奥山には六十になると人骨山に捨てたという伝えがある。
原典より
長生郡一宮町の高藤山近くの新堰のそばにほら穴がある。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。