兵火で釣鐘が沈んだ鐘が淵
どんな伝承か
住宅団地が造られてすっかり様子の変わった君津市内箕輪の弁財天に、鐘が淵とも念仏池とも呼ばれる泉がある。この泉の隣には、県の史跡に指定された九十九坊廃寺跡がある。伝えによると、戦国時代に北条・里見両氏が戦った際の兵火でこの寺が焼けて滅び、そのとき寺の釣鐘がこの泉に沈んだので、鐘が淵の名が付いたという。また、この泉で大声を上げたり、銭を投げ入れて念仏を唱えたりすると、水底の何か所からもいっそう清らかな水が湧き上がるので、念仏池とも呼ぶのだと伝える。著者は、泉への信仰が典型的な形で集まった貴重な泉だと述べている。
原典より
住宅団地が造成され一変した、君津市内箕輪の弁財天に鐘が淵とか念仏池とよぶ泉がある。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。