老人がとっさに名づけた衣紋柿
どんな伝承か
君津市と合併した旧上総町の教育委員会がまとめた『上総町の民話』に、衣紋柿の起こりを伝える話が収められている。三石山をはじめとする亀山地方は昔から柿の名産地で、自然に実る木の実が土地の特産だったという。昔、吉右衛門という老人が滝原という所の泉龍寺を訪ねると、境内に柿の木が一本あった。住職はその柿の種類が分からず吉右衛門に尋ねたが、老人も知らなかった。そこでとっさに自分の名の一部を取って、衛門柿だと答えた。これ以来、衣紋柿と呼ばれるようになったという。渋柿だが、樽抜きにした柿として味のよさが喜ばれた。
原典より
衣紋柿の起源を伝える伝承が、君津市と合併した旧上総町の教育委員会編『上総町の民話』に採録されている。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。