宿の礼にムジナが残した筆跡
どんな伝承か
ムジナが書いたという筆跡が、富津市の内野家に伝わっている。南無八幡大菩薩、亀暦七歳と記された一幅である。むかし清澄山に棲んでいたムジナが旅に出たくなり、おくげさんの姿へ化けて、村送りで山を越えながら江戸を目指した。鹿野山の麓の佐貫の宿まで来たところ、名主の内野兵右ヱ門のもてなしがよほど嬉しかったとみえ、遠洲屋という宿でこの書を贈ったという。ところが姉崎まで行ったところで、人払いをして食事をとる様子から正体が知れてしまったと伝えられる。
原典より
ムジナとタヌキは同一かどうかという論争があったが、とにかくムジナの書いたという筆跡が、富津市含富里の内野美三夫氏方に伝えられている。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。