前世を語った戸崎村の子
どんな伝承か
寛政年間に出た『梅翁随筆』に、上総国の子どもが前世を語ったという話が載っている。望陀郡戸崎村、今の君津市小櫃にあたる村の百姓佐兵衛の息子が、五歳のとき父母に向かって、自分はもと相模国矢部村の六右衛門という者の子で、七歳のとき馬に踏まれて死んだのだと語った。父母はふしぎに思いながらも、大きくなったら話してやろうと書き留めておいた。その後、相模国の人が村に来て泊まったのでこの話をすると、旅人は矢部村の近くの者で、六右衛門のことをよく知っており、その子が馬に踏まれて死んだことも知っていたという。
原典より
寛政年間(一七八九―一八〇一)に刊行された『梅翁随筆』に、上総国の小児が、前生を語ったという話がある。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。