梨を流して祈る顎なし地蔵
どんな伝承か
島根県松江市に伝わる俗信。歯の痛む人は顎なし地蔵に祈るのだという。本尊は隠岐にあるが、出雲の人たちはみなその地蔵に向かって祈る。痛みが治ったら宍道湖か、どこかの川か海、あるいは流れ川へ行って、梨を十二、毎月一つずつ十二か月にわたって流す。その梨は潮の流れに乗って海を越え、隠岐まで運ばれていくのだとみな信じている。顎なし地蔵とは顎のない地蔵という意味で、この地蔵は前生で下顎の歯がひどく痛んだため、痛むその顎をもぎ取ってどこかへ放り捨てて死に、菩薩になったのだという。隠岐の人たちがその顎のない姿の像を作ったので、歯を病む者はみなその地蔵に祈るのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。