阿蘇沼のオシドリと真円の発心
どんな伝承か
八千代市村上の正覚院には、鎌倉時代後期の作として名高い木造の釈迦如来立像があり、京都嵯峨の清涼寺の釈迦像を写した清涼寺式と呼ばれるものである。この寺の縁起はオシドリの物語である。昔、平入道真円が阿蘇沼でオシドリの雄を射落として持ち帰った。その夜、真円の夢に一人の女が泣きながら現れ、自分は沼のオシドリの雌だと名のって、日が暮れれば誘い合ったのに、まこもの陰で一人寝るのがつらいという意味の歌を詠んだという。翌朝見ると、射落とした雄のかたわらで、悲しみのあまり雌も死んでいた。哀れと世の無常を感じた真円は、寺を建てたと伝わる。
原典より
八千代市村上の正覚院に、鎌倉時代後期の遺産として名高い、木造釈迦如来立像がある。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。