落城跡の焦米で瘧を治す
どんな伝承か
土岐頼春の万木城が陥落した跡からは焦米が出る。天正年中、落城の日に穀倉が焼け落ち、米が火の熱で固まりとなって地中に没し込んだものであるという。この焼けた米を拾っておき、人が瘧を患ったとき、新しい井華水を汲んで一粒を投じて飲めば、どのような瘧でもたちまち癒えると言われている。肥後や信濃にも焦米石と呼ぶものがあり、熱火に溶けて数百年を経て石と化した米を服すと、よく瘧を癒すという。『西域記』にも、乾陀羅国の尸毘王の倉庫が火に焼かれ、その焼米が今も残り、一粒を服せば長く瘧を患わないと載せている。
原典より
土岐頼春が万木城陥落の址から出る焦米は、その天正年中陥落の日に、穀倉の焼け落ちたため、火の熱器の固まりとなつて、地中に没し込んだものであるさうだが、この焼けた米を拾つて、人の瘧を病ふるとき、新の井華水を汲んで、一粒を投じ…—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。