手柄を立てた牛袋の番太郎の身分
どんな伝承か
望陀、今の木更津市牛袋の番太郎は、筋目の正しくない卑しい身分の者であった。ある時、合戦があり、牛袋の百姓たちは地頭所へ賦役に出ることを恐れて、この番太郎に頼んで代わりに出てもらった。番太郎はなかなかの働き者で軍中でもよく働き、ついに抜群の手柄を立てたので、大将は相応の位置に取り立てようと、どの百姓の子かと尋ねられた。番太郎が頭を振って卑しい者であると答えると、地頭は思召しを差し控え、系図の正しくない者を官に記したとの咎めを受けた。それでも以来、番太郎は村の中程の位置に置かれ、里の上座たるべしと仰せを蒙ったという。
原典より
望陀(今の木更津市牛袋)の番太郎は、番太郎でも、筋目の正しくない、卑しい身分の者であつた。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。