頼朝が蟹を放った蟹ヶ池
どんな伝承か
君津郡清川村長須賀の東、菅生村の地にある蟹ヶ池は、周り八十余歩の小池で、池中の小島に弁財天が祀られている。深くはないが、どれほど日照りが続いても、汲み干してしまっても、一夜を経ればもとのようになるので、村民はたいそう貴重にしている。昔、源頼朝が安房から上って鎌倉へ向かう途中、この池の畔で餉を食べた。箸がなかったので笹を折って箸としたところ、誤ってこの池の蟹を傷つけてしまった。頼朝はこれを憐れんで放生の意を池に注いだので、それから蟹ヶ池には蟹が生えなくなったという。
原典より
長須賀区の東が、菅生村の地にある蟹ヶ池は、周り八十余歩の小池に伝へらるるもので、池中に小島があつて、弁財天が祀られてゐる。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。