安房に上陸した頼朝の足跡と地名
どんな伝承か
治承四年、石橋山の戦いに敗れた源頼朝は、八月二十七日に相模の真鶴岬から船を出し、安房の竜島に上陸したと伝えられる。上陸の地点には異説もあるという。貝渚へ向かう道の峰岡山の頂には、頼朝が口をすすいだという楊子水が涸れずに湧き、高崎には旗竿に伐ったという竹が節をそろえて生えると伝える。九月に入ると洲崎神社に詣で、野島岬の松に腰かけて盃を挙げたと語られ、犬掛では携えた柿の枝を地に挿して志の成就を祈ったという。兵は千騎森・五十騎橋・万騎橋と数を増し、大夫崎では磨墨と名づけた名馬を得て、待崎で平広常の軍を待ったと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。