園児にだけ見えた溺死の男の子
どんな伝承か
一九九九年の夏、東京都内の保育園の園児たちが、鋸南町の海辺にあるふじや旅館へ泊まりがけで出かけた。夜十一時を過ぎたころ、五歳の女の子が急に泣き出し、男の子が話しかけてくるから眠れないと訴えた。部屋には女の子が五人寝ているだけで、先生の目には男の子などどこにも見えない。それでも女の子はしゃくり上げながら部屋の隅を指さし、そこにいると言い続けた。先生はぞっとしつつ添い寝をし、お話や子守歌でようやく寝かしつけた。翌朝宿の人に話すと、去年海水浴で溺れて亡くなった男の子かもしれないと顔を見合わせたという。
原典より
当時小学校四年生だった息子の友人が肝臓の病気で入院していた。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。