御子神典膳の出生地
どんな伝承か
安房郡丸村大字丸本郷字御子神の地は、剣客御子神典膳の出生地であるという。典膳は初め里見氏に仕えて武州に居り、幼いころから剣を好んで江戸に出ていたが、剣客伊藤一刀斎景久に勝負を挑み、およばぬと悟ってその門に入り、諸国を遍歴して研鑽を重ね、遂に奥義を得た。のち師の命により相馬郡小金原で同門の善鬼を斬り、瓶割の刀を授けられた。一刀斎は、これからは剣を止めて仏道に帰る、汝は速やかに故郷へ帰って術を世に伝えよと言い残して姿を消し、行方知れずとなった。典膳は江戸で一家を立てて門人を養い、のち小野次郎右衛門と改め、三百石を賜わって将軍家武芸の師となり、寛永五年十一月七日に没したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。