漂着した島が沈んだ赤墳の怪
どんな伝承か
『桃山人夜話』にある、赤墳が島となっていたという怪しい話である。安房国の野島ヶ崎に佐吉と又六という二人の船頭がいた。ある日、客二十一人を乗せた船が海で暴風に遭い、客たちはどうしてくれるとわめいたが、船は流れに任せるほかなかった。やがて船は一つの島に流れ着いた。岩の多い島で、岩に生えた草木の枝には藻屑がからみ、岩の穴は魚のすみかになっていた。船頭が三里も歩き回っても人家はなく、水を手ですくって含むと海水だった。海が静まって漕ぎ出し、二、三町進んで振り返ると、その島は海に沈んでいった。島は赤墳だったという。
原典より
二、三町ばかり漕ぎ、振り返ると、先刻の島は海中に沈んだ。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。