牛に布を奪われた嫗と布引山
どんな伝承か
善光寺に参ろうともしない偏屈な老婆が、四月八日の観音の日に布を干していると、大きな牛が現れ、角に布を引っかけて走り出した。老婆は追いかけるうち善光寺まで来てしまい、布は見つからないまま参詣して帰った。すると牛に取られた布は目の前の山にかかっていたという。この山を布引山と呼び、山腹には今も布のような白い筋が一節見えるといい、『牛に引かれて善光寺参り』の言葉もここから生まれたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。