日輪を招いて果てた炭焼長次郎
どんな伝承か
猪の頭から西南へ一里の所に天子ヶ岳がある。都の姫君が容貌を恥じ、夢のお告げによって富士山麓の炭焼と結ばれたという筋は、ほかの炭焼長者と同じである。その頃、頼朝が富士の巻狩をした際、にわか雨で蓑を千人分借りに来ると、長者は召使千人に持たせて差し出した。頼朝は返すために片目のものを集めたが五百も集まらず、長次郎はそれをことごとく近くの池へ沈めてしまった。この日、粟の種蒔きを一日で終えようと日輪を招き返したところ、急に熱病にかかって池に身を投げて死んだ。この池を長者池といい、住む魚はみな片目だと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。