霜月の夜に群れで山へ上るカッパ
どんな伝承か
書き手の亡き父の体験。霜月ごろのある日、母の父が危篤という知らせを受けた父は、身支度もせずに飯江村の母の実家へ駆けつけたが、祖父はその夜に亡くなった。いったん家へ戻ろうと、実家のある山から川沿いの道へ下りて水車のあたりまで来ると、川底からヒルヒルヒルと妙な鳴き声がやかましく聞こえてきた。立ちのぼる川霧をすかして見ると、四つか五つくらいの子どものようなものが何十匹も向こう岸へ這い上がり、山のほうへ上っていく。これはカッパで、寒くなるので山へ上るのだろうと察した父は、さすがに気味が悪くなって里へ走り下りたという。
原典より
わしはこの目で何べんも見たんじゃ。—— 現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。