小名木川の扇橋に浮いた河童の頭
どんな伝承か
昭和四十九年の春、昼を過ぎたころの話である。当時小学四年だった語り手は、従姉二人と連れ立って小名木川に架かる扇橋のたもとまで来た。そこには危険を知らせる青い立て札があり、河童の絵が添えられていた。何気なく水面を見ると、川底から何かがゆっくりと浮き上がってくる。三人で目を凝らしても、丸い皿のまわりに毛の生えた河童の頭にしか見えない。それは同じ場所で浮き沈みを繰り返し、やがて消えた。のちに年配者から、深川あたりは江戸のころからの河童の名所だと聞かされたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。