大田川の柳の根元で眠る猿のような河童
どんな伝承か
明治の初年、石見の大田町字新市の農民、春日徳次郎は、居村を流れる大田川の南岸、字樋の上の柳の根元で、白昼に幾度も河童が休んでいるのを、対岸の堤を通りながら見たという。ちょうど猿が眠っているようなありさまで、距離は三十間ほどしかなくよく見えたが、正確な容貌まではわからなかった。河童のいた真下は一丈ほどの深い淵で、今は浅くなっている。徳次郎は一人でなく、同行者とともに見て、あれが河童だと指し示したこともあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。