古峰原の風呂に現れた荒沢の天狗
どんな伝承か
明治の初め、庄内の狩川に住む山師の佐吉は、荒沢の杉林を買い取って大もうけをした。ところが仕事始めの日、最初に斧を入れた木から血のように赤い汁が流れ出し、その後も人夫の怪我やトロッコの転覆が続いた。二、三年たって代参のくじに当たった佐吉は、仲間と古峰原へ参り、参籠所で風呂に入った。すると火加減を見に来た寺男が庄内の言葉で親しげに名を呼んだ。顔は赤く鼻の高い、絵に見る天狗そのままで、荒沢の天狗だと名乗り、木を切られて居場所をなくしたのでここで働いていると語った。佐吉は湯桶ごと宙に持ち上げられて逃げられず、気を失った。以来、佐吉は神社や寺の木を一切買わなくなったという。
原典より
出典・戸川安章著『羽黒山二百話』(中央企画社)。—— 現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。