風もないのに倒れかかった境向の大木
どんな伝承か
大正のはじめ、八天狗のあたりの山林を持っていた桑尾の坂本猪之助という人が、境向の木も自分のものと考え、売り払うつもりで高知市から仲買人を連れてきた。ところが境向へ足を踏み入れたとたん、風もないのに大木が猪之助のほうへ倒れかかった。驚いた猪之助は家へ逃げ帰った。この話を聞き伝えた人たちは、以来この境向の木を大切に守っている。近ごろ、榊の枝が根元に捨てられていたことがあった。聞けば、商売人が榊を伐って帰る途中で手がしびれて困り、もとの木の元へ返したのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。