山伏の鈴を拾った猟師と天狗山
どんな伝承か
明治三十年ごろ、横道に安見の雅という猟師がいた。山で山伏の振る鈴と金の箸を拾って以来、天狗さまを崇め、位を授かるのだと言っては毎日山へ通った。二月九日は山婆が飯を炊く日で、山に入ってはならぬ日とされていたが、雅はその日にも天狗山へ登った。すると大きな猿のような爺がいたので鉄砲で撃つと、爺は転げ落ち、ものすごい音がした。下へ落ちたはずが、探しても姿は見えない。あれは天狗さまだったのだといわれた。その後、大雪の晩に雅は行方知れずとなり、皆で捜すと天狗山の五十間もある高さから落ちて大怪我をしており、しばらく気がふれていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。