徳蔵寺の狼伏せと薪で倒した狼
どんな伝承か
吉野郡の山村で聞かれた話。狼は三十五、六年前まではいた。十五、六年前に九十歳で亡くなった弓手原の今谷の弥吉は、三十代のころ山で狼に後ろから追われ、薪を投げつけて、見ていた人と二人で殺したという。また徳川時代には村の近くに狼が出て困ったので、徳蔵寺の住職に祈禱してもらい狼伏せをした。以後狼は村に出なくなり、毎月二十八日を狼伏せの日として村中が寺に集まり祈ったが、近ごろはやめてしまった。送り狼に送られたら、家に入るとき脱いだ草履を外向きにしておくと狼も帰るといわれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。