狼の乳で育った奥多摩随一の鉄砲名人
どんな伝承か
檜原村の市川貞次郎は、狼の乳を飲んで育ち、奥多摩随一と呼ばれる鉄砲の名人になったと伝わる。射撃は百発百中で、獲物を狙って失敗したことがなく、先年九十三歳で亡くなるまで戦果は数知れなかった。狼の血が体内に入っているために眼がよく利き、獲物をとる勘がよく働いたのだろうと古老は語る。維新間もない明治五年の春に起こった、東京の辺境檜原の里の話で、多くの民話が作り話であるのと違い、これはノンフィクション民話なのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。