猫が火傷を治した天谷鉱泉の由来
どんな伝承か
福井県丹生郡朝日町(旧・糸生村天谷)にある天谷鉱泉は、明治初期に全身やけどを負った猫がこの地に湧く水で傷を癒したのが始まりと伝わる。以来、火傷や皮膚病に効く湯として人々に開放され、猫を守護神として祀るお堂の祭りも営まれてきた。かつて主人が四キロ離れた平坦な西田中の町へ湯治場を移そうとした際、水の効能が変わってしまうと分かり、移転を思いとどまったという。語り手自身も大正時代に母に連れられ、昭和四〇年には農薬で手を痛めた娘を連れて訪れたと語っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。