病床の主を案じて空腹をこらえた猫
どんな伝承か
那覇市に住む女性が二十歳の頃、一ヶ月ほど病気で臥せっていたことがあった。その頃飼っていた猫を、片時も離さず車で旅行に連れて行ったり、買い物にも肩に乗せて行ったりして可愛がっていた。夫は仕事で忙しく出張も多く、臥せっている間はほとんど猫と二人だった。女性が寝ている間、猫は一日中でも布団にもぐり込んだり枕元に座ったりして、空腹の様子を見せなかった。やっと床から這い出して買い物に出かけようとすると狂ったように鳴き、初めて空腹を訴えた。じっと傍を離れず身を案じていたような猫の目が忘れられないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。