若衆宿の夜に消えた老婆と狸の足跡
どんな伝承か
六十数年前、若衆宿の祭り芝居を終えた若者たちが囲炉裏で飲み食いしていると、炉端にいた当家の八十歳ほどのお婆さんが提灯を持って外へ出たきり戻らない。畑に唐辛子の実が点々と落ちているばかりで、大勢で探しても見つからず、夜明かしの焚火をするうち、旧道を探し直した十人ほどが一本橋の下の淀みで気を失ったお婆さんを見つけた。提灯は二百メートルも離れた所にあった。翌日、流しの水が落ちるぬかるみには四つ足の跡が乱れ、畑にはお婆さんと獣の足跡が寄り添って続いていた。狸とみてパン松さんが罠を掛けたが逃げられた。その晩、トンネルの方から女が歩いてきてすぐ消え、母は化け物だと逃げ帰ったという。
原典より
手平の短歌の先生とこへ行ったとき遅なってしもうてのう、先生に送ってもろうたんやが、あっこらさぶしいとこでのう、ドブのはたにお地蔵さんがあったんえ、そのお地蔵さんの一寸向うにうどんて書いた赤いちょうちんがつっちゃあって、そ…—— 現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。