下田に伝わったこっくりさんの始まり
どんな伝承か
こっくりさん(狐狗狸さん)は、ところによっては「お傾き」とも呼ばれる。昔から日本にあったものと思われがちで、三、四百年前にキリシタンが伝えたという説まであるが、井上円了の考証では起こりはずっと新しい。明治十七年ごろ、アメリカの帆船の船乗りたちが伊豆の下田にとどまっていたあいだに、土地の人たちへ教えたのが始まりだという。一尺三寸ほどの細い竹を三本合わせて中ほどを紐でくくり、三脚のように開いて、その上に盆やお櫃の蓋を伏せて載せる。何人かがその上に軽く手を置いてぼんやりしていると、脚の一本がひとりでに持ち上がって問いに答える。翌日の天気、居合わせた人の年や兄弟の数、失せ物のありか、事の成り行きなどを占い、当たることも外れることもあった。手を置くのは脚の数に合わせて三人と決められていたが、実際には一人でも五人でもかまわず、動かしているのはたいてい一人で、ほかの者はそれに引きずられているだけだったという。
原典より
明治十七年頃亞米利加の一帆船の乗組員が伊豆の下田に滞在中、これをその地の人に傳へたのが起原ださうである。—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。