狐狗狸が暴いた夫婦の浮気
どんな伝承か
井上円了が『やまと新聞』の記事として引いている。巣鴨に住む勇公という男が、王子の茶屋で奉公していたお辰を妻に迎えた。折しも流行していた狐狗狸を据え、お辰に以前好いた男がいたなら足を上げてくれと問うと、そのとおりに足が上がった。負けじとお辰が、亭主にいま隠れて通う相手がいるなら足を上げてくれと問うと、こちらの足も上がる。これがもとで夫婦げんかになった。見かねた母親が、今のは冗談だろう、冗談なら右へ回ってくれと言うと、狐狗狸はすぐそのとおりに回り、三人そろって大笑いになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。