川越街道で見た血の色の月
どんな伝承か
漫画家の水野英子が語った話である。三年ほど前の深夜、池袋から車に乗り、川越街道を通って帰る途中のことだった。ビルの陰から、いきなり空いっぱいに赤い月が現れた。地平線に近い低さで、汚れた血のような色をしていたという。同乗していた者は皆、心臓が激しく打つのを覚えた。お化けは少しも怖くないけれども、あの月の恐ろしさは忘れられないと語り、あれは人類への公害の警告なのだと思っていると結んでいる。
原典より
たしか三年前、深夜、池袋から車で川越街道を帰宅中、ビルのかげから、いきなり空いっぱいの赤い月が出現・・・・・・地平線に近く、まるで汚れた血の色をしていたんです。—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。