伊邪那岐神社の山に並ぶ数十の狸火
どんな伝承か
大正十三年の夏、薄曇りに片割れ月がかかる午前二時ごろ、山城谷村字川崎の村上某が用先から帰る途中、吉野川をはさんだ対岸の下川名を眺めると、村社の伊邪那岐神社の上の山林に数十の火が現れた。火は一列になって東へ進み、大佐古懸の道へ出てから西南へ曲がり、神社の玉垣のあたりで先頭から順に消えた。畑の畔で煙草を吸いながら見物した村上は、狸火には光がないと聞いていたが確かに光があり、列をなして進むさまは言い伝えどおりだったと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。