蛍取りの帰りに降る狸の石つぶて
どんな伝承か
徳島県の大島病院長で医学士の大島兵次郎が語った体験談である。十四、五歳の頃、友人数人と郷里の郡里村にあるカンカケという谷へ蛍取りに出かけた。その夜は不思議なほど蛍が多く、奥へ進むほど増えて、皆の籠はいっぱいになった。ところが谷を出てみると、籠の蛍はいつの間にかわずかしか残っていない。首をかしげつつ広い所まで来ると、拳ほどの石つぶてがどこからともなく雨のように降ってきた。十人以上が全力で投げても及ばない数なのに、人の気配はまるでない。狸の仕業だと皆で逃げ出し、彼は怖さのあまり近くの親類の家に泊めてもらったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。