国中の犬神使いを罪に問えと命じた執達状
どんな伝承か
阿波国では、土佐の九郎右衛門一家の逃亡より二百年も早い文明四年八月十三日に、国中の犬神使いを探し出して罪に問えと命じる文書が出されている。飯尾常蓮が三好式部少輔長之に下した執達状で、三郡の領主たちに触れて厳しく申し付けるよう求めたものである。福井好行の『徳島県の歴史』によれば、この文書はいまの美馬市穴吹町口山の尾形家に伝わっている。著者は、近代の犬神差別が家筋を村から締め出すものだったのに対し、この時代の美馬郡あたりでは、犬神使い本人に悪意をもって憑ける意思があるとみて罪にしていたらしいと指摘する。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。